2026.06.18 — 事例
実大空間での空気清浄機・除菌装置の性能評価
— 乳酸菌を使ったエアロゾル評価の実際
35m³の実大空間で乳酸菌(Lactobacillus plantarum)をエアロゾル化し、UV-C LED除菌装置の性能を評価した受託試験の事例。AG-5ミストジェネレーターを用いた評価の流れを紹介します。
空気清浄機の性能をどうやって証明するか
カタログに「99%除菌」と書かれた空気清浄機やUV-C除菌装置。その性能を裏付けるには、 小さなテストチャンバーではなく、実際のオフィスや施設の大きさに近い空間で、 どの程度の効果があるのかを確かめる試験が欠かせません。 私たちが実施した35 m³の実大空間での試験は、この問いに向き合う一つの方法です。
なぜ「乳酸菌」を使うのか
実験室で新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスを扱うには、バイオセーフティレベル(BSL)3という 高度な設備が必要です。これに対し乳酸菌(Lactobacillus plantarum)は、BSL-1で安全に扱える微生物です。
乳酸菌を選ぶもう一つの理由は、エアロゾルとしての挙動がウイルスに似ている点にあります。 乳酸菌の大きさ(約0.8〜3 µm)は、呼吸器を通じて拡散するウイルスのサイズに近く、 空気中での沈着や移動のパターンが参考になります。 つまり乳酸菌の試験結果から、実際のウイルス対策の有効性をある程度推測できるということです。 安全性と科学的な妥当性の両立が、乳酸菌試験の強みです。
試験空間:35 m³の実験室での流れ
今回の試験は、35立方メートルの閉鎖空間で実施しました。一般的な会議室やオフィススペースに近いサイズです。 試験は次の流れで進めました。
- 乳酸菌液の準備 — 一定濃度の菌液を適切に希釈し、空間噴霧用に調整。
- 空間への噴霧 — 自社のAG-5ミストジェネレーターを使用。サーキュレーター複数台で空間全体を均一に混合。
- 時系列でのサンプリング — 噴霧開始直後から複数の時点で、空間内の複数箇所から空気を採取(間隔や方法は試験目的により異なります)。
AG-5が35 m³に対応できた理由
AG-5はエアロゾル発生装置ですが、オリフィスの選択が重要です。 今回の試験ではLサイズのオリフィスを装着しました。オリフィスは液体を微細なミストに変えるノズル部品で、 Lサイズは大流量・大空間向けの仕様です。一方、同じAG-5でも小さなSオリフィスを使えば、 in vitro(細胞培養)向けの微流量発生も可能です。この柔軟性が、AG-5が幅広い試験に対応できる理由です。 詳しい仕様やオリフィスのバリエーションについては、AG-5製品ページをご参照ください。
サンプリングと培養
実大空間での試験は、発生と同じくらい、正確なサンプリングが肝心です。
- 空気採取 — 標準化された方法に従い、一定の流量で空気を採取
- 捕集方法 — 適切なフィルター媒体を用いて微生物を捕集
- 採取箇所 — 空間内の複数箇所(出入口、室内など)から採取
採取後はフィルターを適切な培地に移し、乳酸菌に最適な条件(温度・時間・嫌気環境)で培養。 培養後、顕微鏡で菌コロニーを計数します。 具体的な試験条件(採取流量、採取時間、培養条件など)は、試験の目的や規格要件により調整されます。 詳しくは受託試験ページをご覧いただくか、お問い合わせください。
試験結果
今回の試験では、UV-C LED除菌装置の性能を評価しました。
- 装置なし(コントロール) — 時間とともに乳酸菌コロニー数が減少するものの、90分後にも数百CFUが残存
- 装置稼働時(UV-C ON) — 30分で乳酸菌コロニー数が大幅に減少。60分以降は、装置出口で100%の除菌効果を確認
カタログの「99%除菌」という表記が、実大空間の試験でも裏付けられたということです。
この試験で何が示せるのか
- 除菌装置の実際の効果 — 小さなテストボックスではなく、現実的なサイズの空間での動作を確認
- 安全性の観点 — 新型コロナやインフルエンザの代替指標として乳酸菌を使い、病原菌を扱わずに科学的に評価
- 透明性のある根拠 — 根拠のない主張ではなく、「こういう試験をして、この結果が出た」という説明
- 標準的な試験方法 — 一般的な空気清浄機試験の標準的な方法に準拠し、科学的な信頼性を確保
受託試験で対応可能な項目
このような実大空間での評価試験は、NPOバイオメディカルサイエンス研究会(BMSA)との協力体制で受託しています。
- 空気清浄機の除菌・ウイルス低減効果の評価
- 除染装置(VHP、オゾン、UV-C等)の性能確認
- エアロゾル分散シミュレーション
- 施設の環境評価(粉塵、微生物汚染)
自社製のAG-5ミストジェネレーターや、 in vitro向けのVitrocell細胞ばく露システムと組み合わせることで、 in vivo(生体)と in vitro(細胞)の両面から評価することも可能です。 試験条件、期間、費用などの詳細は、受託試験ページをご覧いただくか、 お問い合わせまでご連絡ください。
おわりに
見えない空気。その中に浮かぶ粒子や微生物。それを「数字」に変えることで、はじめて対策の効果が明確になります。 「効きます」という言葉ではなく、「こういう条件で、こういう結果が出ました」という事実ベースのアプローチを大切にしています。 空気清浄機やウイルス対策装置の性能評価、実大空間でのエアロゾル試験についてご関心があれば、ぜひお問い合わせください。
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